事業承継とは

事業承継~閉業・廃業しないために~

経営者には必ず事業承継の出口を選択するときが来ます。

“いつ”・“誰に”・“どうやって”引き継ぐのか?引き継がず、廃業するのか?

理想的な出口を迎えるために、会社と自身の将来について考え始めませんか?
この記事では事業承継の現状、事業承継の課題について説明します。ぜひこの機会に検討をスタートしてみてください。

1 事業承継の現状

中小企業庁の調査によると、2020年頃に数十万人の団塊世代の中小企業経営者が引退の時期にさしかかるといわれています。21年の平均年齢は60.3歳と過去最高になっていることがわかります。

社長の平均年齢

帝国データバンク:全国「社長年齢」分析調査(2021年)より

これまで後継者の不足が大きく騒がれていましたが、コロナ禍という未曽有の危機のなかで、コロナ関連融資の借り入れも含め、自社事業の将来性に改めて向き合った中小企業は多いとされます。こうしたなか、地域金融機関をはじめ事業承継の相談窓口が全国に普及したほか、第三者へのM&Aや事業譲渡、ファンドを経由した経営再建併用の事業承継など、プル・プッシュ型を問わず事業承継メニューが全国的に整ったことも、後継者問題解決・改善の前進に大きく寄与したのではないかと推測されます。

後継者不在率推移

コロナをきっかけに経営者の後継者問題に対する意識の変化が見られるものの、社長年齢別に後継者の有無について確認すると、「60代」では約半数、「70代」は約3割以上、「80代以上」は約3割弱で後継者が不在となっており、社長年齢の高い企業においても、後継者が不在の企業が多く存在することが分かります。

後継者不在率推移

帝国データバンク:全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)より

2 事業承継の3つの種類

事業承継は、誰に引き継ぐかによって、3つの種類に分けられます。それぞれの仕組みやメリット・デメリットを解説します。

事業承継の種類とそれぞれのメリット・デメリット

事業承継
の種類

メリット

デメリット

親族内
事業承継

  • 十分な準備期間を確保できる

  • 従業員、取引先から後継者が受け入れられやすい

  • 株式の売買をせずに事業承継できる

  • 税法、民法上の特典がある

  • 後継者候補に断られる可能性がある

  • 後継者候補が複数いる場合、後継者の決定や経営権の集中が難しい場合がある

  • 個人債務保証ごと引き継ぐ必要がある

社内
事業承継

  • 社内の、ふさわしい人材を後継者にできる

  • 経営資源を引き継ぎやすい

  • 従業員からの賛同を得やすい

  • 現経営者は売却益を得られる

  • 後継者に辞退される可能性がある

  • 後継者の買収資金、納税資
    金の負担が大きい

  • 個人債務保証の引き継ぎが困難な場合がある

M&Aによる
事業承継

  • ふさわしい人材を幅広く探せる

  • 現経営者は売却益を得られる

  • 個人債務保証の解除

  • 従業員の雇用の確保と新しいキャリアパスが開ける

  • 事業継続と拡大が期待できる

  • 廃業コストがかからない

  • どのように仲介会社を選んだらよいかがわかりにくい

  • 希望額で売却できるとは限らない

  • 企業文化の融合に時間がかかる

なお、どの種類でも共通した問題として、「有能な後継者を確保できるとは限らない」ことが挙げられます。後継者選定で誤った選択をすると、承継自体が素早く進んだとしても承継が失敗する可能性がありますので、慎重に選定しましょう。そして残念ながら上記ができない場合は閉業・廃業となります。

3 2022年事業承継の動向は!?

引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつては、親族内承継が全体の9割以上を占めていましたが、近年では親族内承継が減少してきており、親族内での後継者の確保が困難になってきています。

年代別

帝国データバンク:全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)より

2018年以降の過去5年間における事業承継では、先代経営者との関係性(就任経緯別)をみると、2022年の事業承継は「同族承継」により引き継いだ割合が34.0%に達し、全項目中最も高くなっています。しかし、前年からは4.7ptの低下となり、親族間の事業承継割合は急減していることが見受けられます。一方、血縁関係によらない役員などを登用した「社内承継」は33.9%となり、前年から2.5pt増加しています。また、買収や出向を中心にした「M&A」の割合が20.3%と、調査開始以降で初めて20%を超えています。一方で、同じ親族外の承継でも社外の第三者を代表として迎える「外部招聘」はほとんど変わらず7.3~7.5%にとどまっています。親族への承継や、社内外といった形式にとらわれず、幅広い選択肢からより良い事業承継を選ぶことが、トレンドになっているといえます。

4 親族・社内事業承継を阻む3つの主な課題

事業承継は、早期の準備・対策が重要になっていく中で、事業承継が進まない主な課題は、下記の3つであると考えられます。

課題① 後継者問題

・廃業を予定している60歳以上の経営者のうち、約30%が後継者難を理由としていますが、子供や親族が社内にいる場合でも、子供や親族が社長になりたくない、または性格や能力が後継者にそぐう子供や親族がいないということもあります。

課題② 自社株承継と納税資金等の確保

・容易に現金化できない自社株式に多額の相続税・贈与税が課税されるため、準備が不十分な場合には、納税資金が不足してしまったり、負担が大きかったりするケースも存在します。また、事業が順調であればあるほど、株価が高額になってしまうということも難しい点です。

課題③ 株式分散リスクと遺留分問題

・子供が複数いる場合、後継者でない兄弟姉妹に株式を承継すると株式分散リスクが生じます。
・後継者に自社株式を集中して承継させようとした結果、遺留分侵害の訴えを起こされるリスクが生じます。この中でも一番の課題は②の資金確保になるかと思われます。

5 事業承継に向けた準備の必要性

それぞれの課題の解決には早めの対策や準備が大切になってきます。

課題① 後継者問題

後継者の育成には最低でも4~5年は必要といわれています。1人で会社のリーダーとして経営判断ができるようになるには、後継者教育を始めてから4~5年はかかります。 業種や会社の規模によっては、10年以上かかる可能性もあるかと思います。会社経営に必要な知識や技術・ノウハウなどは、多岐にわたりますが、それ以外にも調剤業界は目まぐるしく法改正や環境が変わってくるため、これまでのことを知ることはもちろん、今後難しい業界をどうナビゲートしていくかという視点も必要になってきます。育成という部分だけでも長期的な視点と計画が必要になってきます。まだ後継者なんて、と思っていても早めに決定する必要があります。親族だけでなく、社内事業承継でも同様です。

課題② 自社株承継と納税資金等の確保

後継者への自社株承継は相続・贈与または売買にて実施されます。自社株の承継タイミングを計るために前もって株式の評価を実施する必要もあります。評価方法には類似業種比準価額と純資産価額がありますが、同業上場会社の株価や業績が影響したり、内部留保や資産の含み損益が影響したりするため、時期によって株価が大きく変動する場合があります。評価は適宜行い、適切なタイミングで承継できるように準備をしましょう。同様に納税資金等の確保も必要になります。経営者から後継者への相続または贈与には最大55%の相続税、贈与税がかかります。売買の場合には20%+復興特別所得税が所得税・住民税としてかかります。これらの支払資金も確保しておく必要があります

課題③ 株式分散リスクと遺留分問題

②で記載したように後継者への自社株承継は相続・贈与または売買にて実施されます。生前贈与や相続の場合、ほぼ全ての相続財産などを親族の後継者へ渡すことになりますので、事業用資産・株式について他の相続人から遺留分を主張されるリスクがあります。遺留分を意識した生前贈与・遺言作成をしておくことで、円滑に後継者へ事業承継が進むため、親族内での話し合いや準備が必要となってきます。M&Aを検討している場合は、これらの課題は課題ではなくなりますが、仲介を探す、買い手を探すなどの別の課題があるため、早期の検討は必要になります。M&Aについてはこちらの記事を参考にしてください。

6 事業承継の進め方

事業承継は以下のように進めます。

オーナー対決

7 事業承継の際に使える制度は?

税金やその他の費用についてであれば、事業承継税制や補助金の活用を検討することも可能です。事業承継税制を活用することで、後継者が取得した自社株式にかかる相続税・贈与税の納税猶予を受けられます。納税は、一定期間猶予された後、条件を満たせば免除されます。なお、猶予・免除される税額は、相続税が80%もしくは100%、贈与税が100%です。
基本的には、M&Aを通じて会社などを売却することによって、金銭的対価を獲得することが可能です。その資金を経営者の引退後の生活資金とすることもできますし、事業資金の個人負担の返済にも利用することも可能です。譲渡後のライフプランや資金ニーズにあわせて、さまざまな資金利用ができるようになります。贈与税・相続税ともに100%猶予・免除される「特例措置」は、2027年12月31日までと期限が定められています。親族内事業承継を検討している方は、早めに制度の活用に向けて対策を講じましょう。
また、事業承継をきっかけに新たな取り組みを行う中小企業等を支援する「事業承継・引継ぎ補助金」の活用も検討できます。この補助金は、親族内事業承継に限らず、社内事業承継やM&Aによる事業承継も対象です。
「経営革新」「専門家活用」「廃業・再チャレンジ」という3つの分野があり、「経営革新」には創業支援型(I型)・経営者交代型(II型)・M&A型(III型)の3種類があります。また、「専門家活用」には買い手支援型(I型)・売り手支援型(II型)の2種類があります。
例えば、「専門家活用」では、次のような経費が補助対象となります。

●旅費
●外注費
●委託費
●保険料
●移転・移設費用 など

なお、委託費のうちM&A仲介費用については、「M&A支援機関登録制度」に登録された業者に支払う費用のみ対象となります。
補助率と補助金額は、買い手支援型・売り手支援型ともに次の通りです。例外となるケースや、年度による違いもあるため、利用を検討する際は経済産業省および中小企業庁の公式情報を参照してください。
事業承継・引継ぎ補助金事務局: https://jsh.go.jp/r4/experts/

8 事業承継 ~閉業・廃業しないためにするべきこと~

事業承継の現状から課題、流れをご案内してきましたが、事業承継をするためには年単位での準備期間が必要ということを忘れないでいただければと思います。
もちろん、弊社のお客様には体調がすぐれずすぐにM&Aをしたい、人材が不足して運用が回らずに急いで相手を探したいという方もいらっしゃいます。
しかしいい形での事業承継を望むのであれば、じっくりと時間をかけて準備していくとこが大切です。まだ、と思っている時こそ、検討を始めるよい時期です。
事業承継にお悩みの場合はまずはお気軽にご相談を。弊社では専門家への紹介をすることも可能です。

ご検討

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