M&Aでよく使われる用語

あ行

アドバイザリー契約(アドバイザリーケイヤク)
M&A仲介会社と締結する仲介依頼契約のこと。 通常は排他的な専任契約の形を採るほか、業務範囲、秘密保持、報酬、免責等に関する事項が記載される。
アドバイザー(アドバイザー)
M&Aの仲介及び手続き上の助言を行う会社および担当者のこと。 機能としては相手先を探索するほか、M&A手続きに関する助言、弁護士・税理士等との調整、M&A全体の進行管理を行う。
一次情報(イチジジョウホウ)
秘密保持契約を結ぶ前に買い手へ提示する譲渡案件情報のこと。 社名は伏せており(匿名)対象企業が特定されない程度に事業内容、業績情報、財務内容等が記載されている。 1枚もの、ノンネームシート(ノンネーム)ともいう。
意向表明書(イコウヒョウメイショ)
買い手が売り手に対してM&Aを行いたい意志があることを示すための書面。主な内容としては、予定の譲渡金額や、スケジュール、スキームなどが含まれる。提出時期としては、トップ面談後であり、売り手としては独占交渉権を付与する相手を選定するにあたっての重要な書類となる。LOI(Letter Of Intent)ともいう。
渡請求(ウリワタシセイキュウ)
相続等で株式を取得した株主(遺族等)に対し、定款に定めることによって、相続人の同意なく会社に売り渡すことを請求できる制度。(会社法第174条) 同族会社は相続によって株主が分散していく運命にあるが、これを未然に防ぐことができる。なお、非上場会社による自社株の取得は株主に対してみなし配当課税(最高税率50%)が行われるのが原則であるが、相続人からの取得の場合は譲渡所得税(一律20%)を課すこととされているため、税制上の恩典もある。
営業権(エイギョウケン)
主に会計や税務で用いられる用語で、企業が有するノウハウ、立地等、他に代替できない無形の価値のこと。買収価格が売り手の純資産額を上回る場合の差額をいう。 類似した用語として、商法では「営業」、会社法では「事業」とに区別しているが、商法施行規則や会社計算規則では「のれん」と表現している。2006年度より、のれんの一括償却は原則禁止されており、のれんの取得後20年以内に規則的に償却し、各期の償却額は販売費及び一般管理費として計上する。
エグジット(exit)
ベンチャーキャピタル等の投資ファンドにおける投資資金回収手段または戦略のこと。 株式公開(IPO)や投資先企業による買戻し、M&Aによる他の株主への売却等の手段がある。
エグゼキューション(execution)
M&Aにおける一連の事務手続き等の実行、管理をすること。
M&A(エムアンドエー)
「M&A」とは、Mergers and Acquisitions, 直訳すると「(企業の) 合併・買収」という意味。企業の合併や買収だけでなく、事業譲渡や資本業務提携を含めた広い意味での企業間提携の総称として使われている。
M&Aブティック(エムアンドエーブティック)
M&Aアドバイザリーを専門的に手がけるプロの事務所。
顧客のM&Aを売り手側若しくは買い手側からアドバイスし、企業買収や再編・統合を支援する。
また、日本においては仲介という形で交渉の仲立ちをする場合もある。中小企業のM&Aにおいては、仲介型が一般的。
エンジェル投資家(Angleトウシカ)
企業の創業の極めて初期段階で対象ベンチャー企業に投資し、テイクオフ (離陸) を支援する人。
原則として個人。 ベンチャー企業が他に資金調達手段のない中での資金供給者なので、こう呼ばれるが、時としてベンチャー企業の成長過程で経営者に対して株主の権限をたてに難題をつきつけることがあり、この現象を「エンジェルがデビルに変わる」という。
また逆に会社を売却して得た資金を元手にエンジェル投資家になる方もいる。
黄金株(オウゴンカブ)
株主総会において、重要議案を否決できる権利を与えられた特別な種類株式のこと。「拒否権付株式」とも言う。 元々英国国営企業民営化に際し外国企業からの敵対的買収に備えるため政府の株式持分に拒否権を付与して防衛策としたのが始まりで、転じて (少数ではあっても) 特定の株主の持分に取締役会決議に対する拒否権といった特別な権限を付した株式のことを言う。発行会社に友好的な株主に黄金株を持たせることにより、敵対的買収に対する強力な防衛策となる。 但し、黄金株には、企業価値の向上が期待でき、過半数の株主の賛成する買収提案でも経営者の恣意的判断で否決することが可能となるなど、株主平等の原則、一株一議決権の原則を害する面もある。 また、黄金株は、友好的な株主が保有していれば敵対的買収の防衛策となるが、逆に買い手側が黄金株を取得するというリスクも存在する。これまでは、種類株式のみに譲渡制限を設けることは認められていなかったが、会社法の施行により、種類株式のみに譲渡制限を設けることも認められることとなった。取締役の過半数の選解任その他重要な事項についての黄金株は上場廃止基準の対象となっているため、上場企業ではほとんど用いられていない。
親会社(オヤガイシャ)
自分の会社に50%超の出資をしている会社のこと。

か行

会社分割(カイシャブンカツ)
会社を複数の法人格に分割してそれぞれに組織や事業を引き継がせるM&A手法のこと。
買い手は分割を行う会社または株主に株式を割り当てる。
グループ内の組織再編としても用いられる。 部門売買という観点からは事業譲渡に類似しているが、事業譲渡が「個々の資産」の譲渡であるのに対して、会社分割は「事業部門一体としての切り離し」という点が異なる。
会社分割には、新しく設立した会社に事業を移す「新設分割」と、すでに存在している会社に事業を移す「吸収分割」がある。
特に吸収分割は、資金力のない小規模なベンチャー企業が大企業の一事業部門を買収するときなどに有効である。
また、会社分割によって新設会社の株式又は既存会社の株式が発行されるが、この株式を誰に割り当てるかによって「物的分割」と「人的分割」に分類される。
カニバリゼーション(カニバリゼーション)
自社の製品・ブランドが自社の他の製品・ブランドとシェア争いをする「共食い」現象のこと。 例えば自社の新製品の導入による既存製品の売上減少があげられる。カニバリ(る)と略されたり、カニバライゼーションと表現されたりする。
株式交換(カブシキコウカン)
買収の際に現金ではなく、自社の株式で支払う買収手法。日本でもアメリカの制度にならい、平成11年に制度として導入された。自己資金がなくても買収できるため、株価が高ければベンチャー企業であっても巨額の買収が出来る。ちなみにITバブル時の大型買収のほとんどが株式交換によるものであった。
株式譲渡(カブシキジョウト)
株式を買い手に譲渡することで経営権を譲渡する方法。 会社名や会社が持っている債権債務、契約関係等は全て引き継がれるため、対外的には株主が変わった以外に大きな変化はなく、取引先や従業員が安心できるようなしっかりとした相手先が買い手企業となった場合、しかるべき引継ぎがなされれば事業がそのまま承継できる可能性が高いといえる。
個々の契約の移転手続きが不要であるため、数ある買収手法のうちでも最も簡便な手法といえる。 ただし売り手企業を丸ごと引き継ぐため、予期せぬ簿外債務などが発覚した場合、高い買い物となるリスクがあるため、M&A前の事前調査 (デューデリジェンス) が必要となる。
財務内容が健全でオーナーが株式の大半を所有している場合は株式譲渡がよいといえる。
中小企業のM&Aでも最もポピュラーな手法である。
株主総会(カブヌシソウカイ)
株式会社の最高決議機関。商法または定款の規定により、会社の合併・解散、定款の変更、役員の選任・解任、計算書類の承認、利益処分、役員報酬などの内部の意思決定を行う。 株主総会には、決算期ごとに開かれる定期株主総会と、必要に応じて開かれる臨時株主総会がある。
合併(ガッペイ)
複数の会社が契約によって1つの会社になるM&A手法。企業結合の究極の形態である。合併には吸収合併と新設合併がある。 吸収合併は、1つの会社が存続会社となり他の一方の会社の権利義務を包括的に承継し、他の一方の会社は清算手続を経ずに解散する方法をいう。 新設合併は、全ての合併当事会社が消滅会社として清算手続きを経ずして解散し、新会社を設立し、合併当事会社の権利義務等の法律関係を包括的に新設会社に承継させる合併形態を言う。 実際には、吸収合併が圧倒的に多く新設合併が行われる例は極めてまれである。新設合併では既得の許認可等が白紙に戻り営業に必要な許認可等は新たに取得する必要があり、また上場会社の場合には新たな上場手続が必要になるなど、手続が煩雑になるからであると考えられる。
企業概要書(キギョウガイヨウショ)
秘密保持契約締結後に買い手に提示する売り手希望の詳細情報のこと。企業名・事業内容のほか、業績情報、財務内容等が記載される。
IM(information memorandum)とも呼ぶ。
基本合意書(キホンゴウイショ)
売り手と買い手の当事者間で契約締結の意思があることを取り交わす契約書。主な内容としては、予定の譲渡金額や実行時期の他、独占交渉権の付与、秘密保持、買収監査への協力などが含まれる。MOUともいう。
吸収合併(キュウシュウガッペイ)
合併の一形態。1つの会社が存続会社となり他の一方の会社の権利義務を包括的に承継し、他の一方の会社は清算手続を経ずに解散する方法をいう。
吸収合併が圧倒的に多く、新設合併が行われる例はまれである。
競業避止義務(キョウギョウヒシギム)
M&A後に売り手が対象法人に関する競業行為を行い、買い手や対象法人に損失を与えることを避けるための取り決め。事業譲渡の場合には会社法21条に定めがあるため、特段の取り決めが当事者間にない場合には20年の協業避止義務が発生する。
金庫株(キンコカブ)
企業が取得し保有している自社株式のこと。決算書上は「自己株式」と表示される。資本のマイナス項目の性格を持ち、取得には原則として定時株主総会の決議を必要とする。
金庫株(キンコカブ)
資本の移動を伴わない事業上の提携のこと。双方の結びつきをより強固なものにするため資本提携を同時に行い資本業務提携とすることもある。
クロージング(closing)
株式譲渡、事業譲渡等の一連の取引が完了すること。一般には最終契約を締結し、代金決済が終了することを指す。「実行」ともいう。
経営権(ケイエイケン)
議決権の一定以上を取得し、企業経営に携わる権利のこと。
決算(ケッサン)
各会計期末において、当該期間中の経営成績を計算確定し、当該期末における財政状態を明確にするために実施すべき会計技術上の一切の手続のことをいう。企業は、商法により少なくとも年1回決算を行うことを要求されている。
コストアプローチ(cost approach)
コストアプローチとは、企業の純資産の時価評価額等を基準に株主資本価値を算定する評価手法である。評価対象企業を構築するためにかかるコストに着目して企業価値を評価する。貸借対照表の資産と負債の純額である純資産に焦点を当てるため、ストックアプローチ、ネットアセットアプローチとも呼ばれる。
コストアプローチに含まれる評価手法としては、簿価純資産法、時価純資産法の2つが挙げられる。簿価純資産は、単に貸借対照表上の純資産額を示す数値であり、時価純資産法は、評価対象となる企業または事業の資産・負債のすべてを時価に置き換えて純資産を評価する手法である。

さ行

債務超過(サイムチョウカ)
債務超過とは、貸借対照表において負債の額が資産の額を上回っている状態のことを指す。
債務超過の場合は、負債の方が資産よりも大きくなっている状態であるため、純資産はマイナスとなる。
債務超過の中にも種類があり、簿価の貸借対照表上で債務が超過している状態にあるものを簿価債務超過、資産や負債を時価評価してもなお債務が超過している状態にある場合を実質債務超過と言う。
シナジー効果(シナジーコウカ)
会社を結合することにより、その企業価値が単に1+1が2になるのではなく、3にも4にもなる相乗効果のこと。 経営資源が集約されたり、別々の事業を組み合わせたりすることにより、新たな付加価値が生まれることによってシナジー効果が発生する。 例えば同業会社とのM&A (水平型M&Aという) では、重複部門のカットや重複投資を減らす効果が期待できる。 また調剤薬局とクリニックとのM&A (垂直型M&Aという) では、川上と川下が1つの企業に収まることにより、相互補完が可能となるといったメリットがある。
種類株式(シュルイカブシキ)
剰余金の配当の優劣や、株式の買受け、議決権の行使など、他の株式とは異なる権利内容を持つ株式のこと。種類株式の類型は、各項参照のこと。
詳細資料(ショウサイシリョウ)
売り手企業の詳細情報が記載された資料のこと。企業名・事業内容のほか、業績情報、財務内容等が記載される。秘密保持契約締結後に買収希望会社に開示される。
事業承継(ジギョウショウケイ)
会社の経営を後継者に引き継ぐこと。引継ぎ先によって、①親族内承継、②従業員承継、③第三者承継(M&A等)の方法がある。
事業譲渡(ジギョウジョウト)
対象法人の事業の全部又は一部を売買すること。複数の事業を行っている法人が、特定の事業を譲渡したい場合(事業の切り離し)などに選択される手法。
買い手企業にとっては、譲渡対象の資産・負債を個別に指定するため、必要な部分のみ取得し、潜在的な債務のリスクを切り離すことができるメリットがあるが、
権利義務関係を個別に引き継ぐ手続きが必要。
自己株式(ジコカブシキ)
自社で買い取って保有している自社の株式。本来例外的に発生するものであるが、特定の理由により定時株主総会の決議に基づいて取得がおこなわれる場合、金庫株 (項目参照) とも言われる。
譲渡制限株式(ジョウトセイゲンカブシキ)
譲渡にあたり、いくつかの制限がかけられている株式のこと。中小企業では、会社の乗っ取り防止や、意図しない人物へ株式が渡ってしまうことを避けるために、譲渡制限を設けていることが一般的。
スキーム(scheme)
M&Aや資金調達の「手法」のこと。
成功報酬(セイコウホウシュウ)
M&Aが成約した場合に依頼者が金融機関や仲介会社などに支払う報酬のこと。料金水準は仲介会社によって異なるが、1,000万円~2,500万円の最低報酬が設定されていることが多い。
善管注意義務(ゼンカンチュウイギム)
会社法および民法で規定される経営者 (取締役、代表取締役) が常識的に払うべき注意義務のこと。善良なる管理者の注意義務ともいう。M&Aの場合、交渉中もしくは売り手から買い手へ経営権が移転する過程において、売り手側の経営者が買い手側の承認を得ずに多額の資産処分や新たな借入れ、役員報酬の増額などを実行しないよう、事業譲渡契約書の文言に盛り込むことが多い。

た行

退職給付引当金(タイショクキュウフヒキアテキン)
従業員の退職に備えて見積り計上する会計上の負債のこと。
退職所得(タイショクショトク)
所得税及び住民税が課される退職金の所得。 退職金は賃金の後払い、または長年の貢献に対する慰労金という性質を持つため、終身雇用の優遇措置として、給与等の他の所得とは分離して税額が計算され、勤務年数に応じた退職所得控除や、退職所得控除後の金額の2分の1に対して課税されるなど、税務上、他の所得よりかなり優遇されている。
着手金(チャクシュキン)
M&A仲介業者など正式に譲渡もしくは買収の依頼をする際に支払う費用のこと。一般的に100万円~1,000万円で設定されることが多いが、着手金不要の完全成功報酬型をとる仲介業者も存在する。
デューデリジェンス(due diligence)
M&Aにおいては、基本合意後譲渡契約前に行う、売り手企業の調査のこと。
公認会計士、弁護士などが、売り手企業の事業リスク、財務状況前情報との照合等を調査する。
主に、財務、法務、税務、ビジネスの観点から調査が行われることが一般的。中小企業のM&Aにおいては、案件規模と調査費用とのバランスによって調査の量が決定されることが多い。
買収監査、DDまたはデューデリともいう。
投資ファンド(トウシファンド)
投資を目的として調達された資金及びその運営主体。投資対象が主に、未公開会社の場合を「プライベートエクイティーファンド」と呼ぶ。
特別決議(トクベツケツギ)
議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権数の2/3以上を以って可決される決議をいう。特別決議事項の代表的なものは下記の事項、定款変更、取締役・監査役の解任、会社の解散・合併、事業譲渡、資本の減少等がある。
トップ面談(トップメンダン)
M&A交渉のステップのひとつ。譲渡側の社長と買収側の社長が面談をすることを指す。トップミーティングの趣旨は経営方針等について意見交換をすることにより、相手としてふさわしいか相互に判断することにある。
独占交渉権(ドクセンコウショウケン)
M&Aの譲渡希望会社が買い手候補企業に与える「排他的な」交渉権。独占交渉契約中は第三者の関与の有無を問わず、他の候補先との接触は一切禁じられる。

な行

入札方式(ニュウサツホウシキ)
M&Aの進行方法のひとつ。売却案件に対し、複数の買収希望会社が入札によってもっとも良い条件を提示した会社を最終的な買収会社とする方法。この場合の条件には買収金額のほか、スキーム、買収後の経営方針なども選考の対象となるため、必ずしも最高価額を提示した会社が落札者になるとは限らないが、一般的には相対方式と比べて価額は高く決着しやすい。オークション(競売)、コンペ、ビッド方式などともいう。
年買法(ネンバイホウ)
企業評価における営業権の算定方法のひとつ。 平均利益額または超過利益額などに、それが将来、継続すると見込まれる年数を参考として推定された適正な年数を乗じて算出された額を営業権とする方法 (営業権 = 利益×年数)。
ネームクリア(ネームクリア)
買い手候補企業に対して譲渡希望企業の社名等の情報を開示すること。通常、秘密保持契約締結後に行う。
ノンネームシート(ノンネームシート)
M&A対象企業の概要を対象企業が特定されない程度に匿名でまとめたもの。M&A業者が候補先への打診の際に使用する。打診した候補先が関心を示したら秘密保持契約を締結後、より詳細情報を開示して買収についての検討を行う。1次情報、1枚もの、ノンネームともいう。

は行

買収監査(バイシュウカンサ)
M&Aにおいては、基本合意後譲渡契約前に行う、売り手対象企業の調査のこと。
公認会計士、弁護士などが、売り手企業の事業リスク、財務状況前情報との照合等を調査する。
DDまたはデューデリ、デューデリジェンスともいう。
秘密保持契約書(ヒミツホジケイヤクショ)
英略して、NDA(non disclosure agreement)、CA(Confidentiality Agreement)ともいう。
M&Aの際に相手方の企業または仲介会社と締結する契約のひとつ。
買い手企業の場合、売り手企業の経営上の重要事項を知りえる立場にあり、情報漏えいはM&Aの不成立だけでなく、売り手企業の存続に影響を与えることが多いため、M&Aを行う場合は特に徹底した秘密保持が要求される。
表明保証(ヒョウメイホショウ)
M&Aにおいては、契約時又はクロージング時における売り手企業の状態や株式の帰属、株主の意思能力などに誤りがないことを売主が表明し、万が一、表明した内容に反する事実が生じた場合には売主が保証することをいう。 例えば、売り手企業の貸借対照表上、損失引当の計上がされていない偶発債務 (発生が不確定ないしは将来実現するであろう損失金額を合理的に見積ることができないもの) を保全するために、売主が買い手企業に対して追加的な債務が存在しない旨を表明し保証すること。
レップアンドワランティー(Representation & Warranty)ともいう。
簿外債務(ボガイサイム)
貸借対照表上に記載されていない債務の総称。 代表的な例としては、保証債務等の偶発債務が挙げられる。また、中小企業の場合、未払賞与や退職給付債務、貸倒引当金等が貸借対照表に計上されていないか、もしくは法人税法上の繰入限度額までしか計上されていないケースが多く、これらも簿外債務に該当する。

ま行

マネジメントバイアウト(management buyout)
経営陣による企業買収。企業の経営者や幹部社員等が、その企業の一部もしくは全部を買収して経営権を握り独立する手法。 いわゆる「のれん分け」に近い効果があり、LBOや投資ファンドからの出資を受けることにより買収資金の調達が行われることが多い。 日本でも株式の非公開化 (プライベタイゼーション) のため、ワールド、ポッカ、すかいらーくなどの大企業が続々と導入している。MBOと呼ばれる。
みなし配当(ミナシハイトウ)
所得税法上、自己株式の取得や会社の組織再編等により株主が金銭等の交付を受けた場合、一定の条件に該当すると、会社の内部に留保されていた利益の払い戻しと考えられる部分については、正規の配当金と同様にみなされて、配当金としての課税が行われることとなる。 このように、会社法上の配当金ではないものの、税法上配当所得として取り扱われてしまうものがみなし配当である。 配当所得は、一定税率で分離課税される譲渡所得と異なり、原則としては累進税率による総合課税となって税額がより大きくなるケースが多いので注意が必要である。

や行

役員退職慰労金(ヤクインタイショクイロウキン)
役員に支給される退職慰労金。支給の可否及び支給方法、支給金額は本来株主総会で決議されるが、実際には株主総会において取締役会に一任する旨の決議が行われることが多い。 従業員に対する退職慰労金と同じく、退職所得税が課税される。
優先交渉権(ユウセンコウショウケン)
売り手が買い手に与え他に優先して交渉する権利。 M&Aの場合、売り手に対して複数の買い手希望がいる場合が一般的であるが、複数の買い手の中から、買い手の買収条件等を検討して、売り手が1社又は少数の買い手に対し、他の買い手より優先して交渉する権利を与える場合があるが、その交渉権をいう。独占交渉権ともいう。

ら行

利益相反(リエキソウハン)
会社が取締役の債務を連帯保証する場合や、取締役が自己又は第三者のために会社と取引をする場合など、取締役と会社との利害が相反する取引を、「利益相反取引」という。 利益相反取引においては、取締役が自らの地位を利用して自己又は第三者の利益を図ろうとし、結果、会社が損害を受けるおそれがあることから、会社の利益を侵害することを防止するため、利益相反取引を行う場合は、取締役は、取締役会や株主総会等において当該取引を行うことについて承認を受けなければならない(会社法第356条・第365条・第595条)。
M&Aの場合においては、MBO(経営陣による企業買収)の際にこの問題が典型的に表面化する。すなわち売り手企業の経営陣としては株主に対してより高く売却する機会を提供する義務を負っている一方で、買い手としての立場もあるため安く買収したいというインセンティブもはたらくため、本質的に利益相反を起こしている。
さらに経営陣は会社の内情を一般投資家よりも詳しく知りえる立場にあるため、情報格差がある。このような背景があるため、MBOに当たっては取引の公正性の確保が何よりも重要である。
リテイナーフィー(リテイナーフィー)
定額顧問料のこと。M&A仲介を頼む場合、月次等でリテイナーフィーを取る企業もある。
レバレッジ効果(レバレッジコウカ)
「てこの原理」、すなわち、少ない資本投下で何倍もの収益を生み出す効果のこと。一般的に企業財務の世界では「借入」を指す。 買収資金の大部分を銀行借入で調達する場合、少ない自己資金で巨額の買収が可能となり、自己資金の運用利回りを向上させる効果がある。
連帯保証(レンタイホショウ)
実際の債務者 (主たる債務者) と連帯して、その債務の弁済を履行することを保証すること。普通の保証とは異なり、主たる債務者が債務不履行とならなくても保証の履行を要求できる。非公開会社が借入をする際、代表者のほとんどが連帯保証人となっている。
レーマン方式(レーマンホウシキ)
移動した資産の価格に対して一定の割合を乗じて算出する方式のこと。M&A専門のアドバイザリー会社や仲介事業者において一般的に使われているM&A取引における成功報酬の体系であり、取引金額(移動した資産の価格など)に応じて報酬料率が逓減する仕組みになっている。
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算出の基準となる取引金額は、「移動総資産(株式価格+負債総額)」や「企業価値(株式価格+有利子負債)」のケースもあれば、「株式譲渡対価」のケースもある
ロングリスト(ロングリスト)
M&Aにおけるロングリストとは、一定の基準で選定した候補先(売り手希望から見たら買い手候補先、買い手希望から見たら売り手候補先)のリストを言う。 一般的にはこのロングリストをベースに依頼主とM&Aアドバイザーが打ち合わせをして打診先の優先順位を決める。

英語

COC(change of control)条項
チェンジオブコントロール(Change of Control:COC)条項とは、M&Aなどを理由として契約の一方当事者に支配権(Control)の変更(Change)、つまり経営権の移動が生じた場合、契約内容に何らかの制限がかかったり、他方の当事者によって契約を解除することができたりする規定である。資本拘束条項ともいう。
法務デューデリジェンス(DD)の際に発覚して問題視されることが多く、その内容は様々で、緩やかなものでは事前又は事後の通知義務のみにとどめているものもある。
DCF法(DCF(ディーシーエフ)ホウ)
企業評価方法のひとつ。将来生み出すと予想されるキャッシュフローを現在価値の合計をもとに企業の評価額を算出する方法。要するに将来の収益見通しを現時点での価値に置き直して企業評価額とする方法で、広い意味での収益還元法の一種といえる。
ほかに「インカムアプローチ(Income Approach)」や、「収益還元法」、「モンテカルロDCF法」、「リアルオプション法」等がある。
EBITDA((Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization)
税引前利益に支払利息と減価償却費を加算したもの。 日本の会計基準で考えれば、「償却前営業利益」とほぼ同じになる。 「イービッダー」、「イービットディーエー」などと読む。 ちなみに「EV/EBITDA倍率 EV/EBITDA倍率」とは、EBITDAに対してEV(企業価値)が何倍あるかを意味し、買収する場合に何年で元が取れるかを表す指標である。

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